IPv6ほんとの話(1)

IIJlab newsletter #5
$Id: index.html,v 1.1.1.1 2003/08/28 05:58:03 itojun Exp $
(註: この文章はIIJ社内報9月号の再録です。 一部意味が通らなかったりするかもしれません。 また、一部文章をいじっています)
暑さもひいてだいぶん過ごしやすくなってきました。 個人的に夏よりも冬の方が好きなので、やっと楽になった、というかんじです。 夏が苦手な理由にはもうひとつ、 自宅マシンルームの冷却がたいへん、というのがあります。 自宅はマンションの最上階にあるため、 マンション屋上に直射日光が当たり、その熱がうちの天井を通して伝わり、 うちは温室状態になるのでした。 しかたなく冷房で冷やすわけですが、 機械は冷房が大好きなのに対し、人間は冷風が直撃すると風邪をひいてしまいます。

前ふりはさておき。 昨今、「次世代インターネット・プロトコル」とか、「IPv6」の文字が 世間を騒がせています。 まあ、ぼくらIIJ技術研究所の面子もこの騒ぎの一端を担っているわけですが... 今回から数回は、「IPv6ほんとの話」と題して、 仕様のかんどころ、日頃ぼくらが感じていること、 tipsなどをざっくばらんに述べていきたいと思っています。 もし「こんなところが聞きたい」というご希望がありましたら、 お気軽にmailなど頂ければ嬉しいです。


1992年頃、IPv4アドレス空間の枯渇や経路表サイズの増大などの問題を 解決するため、次世代インターネット・プロトコル、IPngの検討が IETFではじまりました。 いくつかの候補が登場しましたが、結果として1994年に SIPP(Simple Internet Protocol Plus)という候補を改善したプロトコルが採用され、 IPv6と呼ばれることになりました。 なぜIPv5ではないかというと、 ST-II(RFC1819)という実時間通信用のプロトコルが既に「5」という バージョン番号を使ってしまっていたからです。

IPv4では、ご存知のように32ビットのIPアドレス (202.232.15.212とか)が使われていますが、 IPv6アドレスは桁数4倍、128ビットになっています。 128ビットもあるIPv6アドレスを表記するには、 16ビットごとに「:」で区切られた16進数を使います。 例えば、わたしが自宅で使っているマシンのIPv6アドレスは、 3ffe:0501:0410:0100:5254:00ff:feda:48bfです。 IPv4では、小規模サイトでは「DNSなんて面倒だからとりあえず省略」という 手抜きもできましたが、 IPv6の長いアドレスはとても覚えていられないので、 IPv6ではDNSが必須、かつ重要な役割を果たすことになります。 DNSは現在でも初心者には敷居の高い技術のひとつですので、 DNS関係のトラブルや質問が非常に増えると思います。 IIJがIPv6に本腰を入れるその前に、「猿でも設定できるDNSサーバ」や、 「簡単設定検証ツール」を開発しなければいけないだろうと思っていますが、 忙しくてなかなかそこまで手がまわりません。

さて、じゃあいつ頃からIPv6が一般に使われることになるでしょう? これは言い替えると検証ツールの〆切ということになるでしょうか(笑)。 IPv6の設計は、「この調子でいくと、2010年頃にはIPv4アドレスは売り切れる」、 「この調子でいくと、ルータの経路表爆発でfull routeを取り扱うルータは とんでもないことになる」という推定にもとづいてはじまりました。 これを信じるなら、〆切は少なくとも2010年より前、ということになります。 実を言うと、NATおよびプライベートIPv4アドレスの大流行や、 ルータの経路表検索性能の向上のおかげで、 アドレス枯渇や経路表爆発の問題はだいぶん楽になりつつあるようです。 ですから、2010年が来ても心配していた問題は現実のものとはならないかもしれません。 いずれにしても、 ここ数年のうちにIPv6が広く使い始められるのは間違いないと思います。 IPv4にはさまざまなしわ寄せが来ていますので、 IPv6の導入とともに、IPv4にまとわりついた過去のしがらみを捨ててしまいたい、 というのが正直なところでしょう。 ただし、IPv4はこれだけ広まってしまったので、 消えてしまったりせず相当長いこと残るでしょう。

ちなみに今日現在のところ、 IPv6の実験ネットワーク「6bone」が IPv4ネットワーク上で仮想的に構築され、世界中の実験組織を結んでいます。 これはマルチキャスト実験ネットワークmboneと同様、 (IPv6パケットをIPv4パケットにくるんで送る)トンネリングによる 仮想的なネットワークです。
日本国内のISPでは、 横浜インターネット互助会(IMASY)が IPv6でのサービスを既に開始しています。 IMASYは互助会としての運営ですので、 メンバーが技術的に興味を持てばすぐに実験をはじめてしまえるわけです。 NECは「うちはIPv6に本気です」というかんじの プレスリリースを出していますが、とりあえずのところ biglobeでのIPv6サポートとかは まだのようです。 ぼくらも試験的にダイアルアップPPPでも受けてみようか、と思っていますが、 モデムの子守りが面倒そうなので、 まずはISDN回線を直接受けるインタフェースカードのドライバ書きから やっているところです。
IPv6入りのルータ製品は既にかなりの種類が出回っています。 今年あるいは来年から出る製品にはかなりの率でIPv6サポートが入っているでしょう。 ただし、実際きちんと相互接続できるのか? 安定して動くのか? と言われると、 「まだまだ」というのが正解でしょう。

今回はとりあえず「習うより慣れろ」ということで、いくつかの 実装の入手元を並べておきます。 是非入手してインストールし、いじくってみてください。 詳しい遊び方についてはまた次回以降。

(IIJ技術研究所 いとうじゅんいちろう)
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